フェイスシートは、利用者の全体像を短時間で共有するための実務書類です。障害福祉の現場では、氏名や障害支援区分といった基本情報から生活の様子までを1〜2枚にまとめ、関係機関との連携の入口として使います。「フェースシート」と表記されることもあります。
本記事では、共同生活援助(障害者グループホーム)を運営している私が実際に使っている項目一覧と、渡す相手によって内容の厚みを変える「書き分け」の考え方を紹介します。項目一覧は、書き写してそのまま使える形にしてあります。
先に実際の記載例を見たい方向けに、条件を選ぶと記載例が何パターンも出てくる無料のジェネレーターも用意しています。登録不要で、その場で使えます。
きっかけは、入居中の利用者に後見人を付ける手続きが進み、後見人候補の方から「利用者さんのフェイスシートをいただけますか」と依頼されたことでした。あらためて書き直す中で整理した内容を、本記事にまとめています。
【本記事の対象読者】
・グループホーム(共同生活援助)を運営している管理者・サービス管理責任者の方
・これからグループホームを立ち上げようとしている方
※フェイスシートは、自治体や事業所によって呼び方や項目が多少異なる場合があります。本記事では、利用者の概要をまとめた書類全般を「フェイスシート」と呼びます。
フェイスシートとは|障害福祉で使う利用者情報の実務書類
フェイスシートは、利用者の氏名・年齢といった基本情報から、家族構成、障害の種類、支給されているサービス、所持している手帳の種類、生活の様子まで、支援を考えるうえで前提となる情報を1〜2枚にまとめた書類です。
障害福祉のサービス現場では、事業所・行政・医療機関・相談支援専門員など、複数の関係者が一人の利用者に関わります。関係者の間で「利用者はどのような方か」をすばやく共有するための共通資料が、フェイスシートの役割です。
フェイスシートは必須書類か|監査で確認される理由
フェイスシートは、「必ずこの様式で作らなければならない」という意味での必須書類ではありません。
ただ、監査の際に「フェイスシートはありますか?」と確認されることがあります。書類の有無を見るというより、利用者の状況をきちんと把握したうえで運営しているかを確認する意味合いだと私は捉えています。
実務の中でも「フェイスシートがないと話が始まらない」と感じる場面が何度もあります。フェイスシートが一枚あるだけで話の前提が揃い、支援の話をスムーズに進めることができます。
グループホームでフェイスシートを使う3つの場面
グループホーム(共同生活援助)の運営では、主に以下の場面でフェイスシートを使います。
- 他事業所や行政と連携を取るとき
- 医療機関や相談支援専門員と情報共有するとき
- 後見人・後見人候補に利用者像を伝えるとき
いずれにも共通するのは、「利用者がどのような方なのか」を相手に短時間で伝える必要がある場面だという点です。
障害福祉サービスでも医療でも、話を進めるためには、手帳の有無、障害支援区分、利用中のサービスといった基本情報の把握が欠かせません。基本情報が分からなければ、次の支援やサービス利用の話にすら進めないこともあります。フェイスシートがあると、「まずフェイスシートを見てください」から話を始められます。
特に、複数の関係者でチームを組んで支援を行う場面では、共通の「入口資料」としてフェイスシートがしっかり作られているかどうかで、連携のしやすさが大きく変わります。
私の場合、後見人候補の方に「うちの利用者さんは、こんな方です」と概要を伝えるために使用しました。後見人になる方なので、重点は金銭面です。どんな金銭管理をしているか、金銭に関する感覚、計算能力、過去にあった金銭面の課題などを厚く書き、食生活や衛生面の情報は少なくしました。書き分けの考え方は、後半の章で詳しく紹介します。
フェイスシートに載せる内容の考え方
先に挙げた基本情報は必須ですが、共同生活援助(障害者グループホーム)では、生活面の情報を意識しておくとより役立つと感じています。
生活の中で見えてくる情報は、どんな支援をするにも必要な判断材料になるからです。
難しく考える必要はなく、目的から逆算して考えれば十分です。
- 「その人がどんな生活をしているか」
- 「支援や配慮が必要なポイントはどこか」
上の2点を押さえていれば、フェイスシートとしては十分機能します。
フェイスシートの項目一覧|運営者が実際に使っている一覧
「具体的に何を書けばいいのか」という声もあると思うので、私が実際に使っているフェイスシートの項目を公開します。
このまま書き写して、自分のホームに合わせて増減してもらって構いません。
基本情報
- 氏名、ふりがな、生年月日、年齢、性別
- 住所(ホームの住所と住民票上の住所が異なる場合は両方)
- 連絡先(本人携帯の有無を含む)
- 緊急連絡先(続柄と連絡がつきやすい時間帯もあると親切です)
家族・関係者情報
- 家族構成(同居・別居の別、関係性の温度感が分かるメモがあると実務では役立ちます)
- 相談支援専門員の氏名と事業所
- 後見人等の有無(後見・保佐・補助の別)
障害・医療情報
- 障害の種類、診断名
- 障害支援区分
- 所持している手帳の種類と等級(療育手帳、精神障害者保健福祉手帳、身体障害者手帳)
- かかりつけ医療機関、通院頻度
- 服薬の有無と管理方法(自己管理か、職員による服薬支援か)
サービス利用情報
- 利用中の障害福祉サービス(就労継続支援、生活介護、居宅介護など)
- 日中活動先の名称と週の利用日数
- 受給者証の支給決定内容
生活情報
- 日常生活の様子(食事、入浴、睡眠のリズム)
- 金銭管理の状況(自己管理か、預り金対応か、金銭感覚の特記事項)
- コミュニケーションの特徴(伝わりやすい話し方、避けたほうがよい表現)
- 支援や配慮が必要なポイント
全部で1〜2枚に収まる量が目安です。詳しく書きすぎると「短時間で全体像を共有する」というフェイスシートの目的から外れてしまうので、詳細はケース記録や個別支援計画に譲り、ここでは「入口」に徹するのがコツです。
フェイスシートの書き分け|渡す相手で項目の厚みを変える
フェイスシートは、一度作ったら終わりの書類ではありません。渡す相手によって、厚く書く項目と薄くする項目を変えると、ぐっと実用的になります。
私が実際にやっている書き分けの例です。
後見人・後見人候補に渡す場合
金銭面を重点的に書きます。どんな金銭管理をしているか、金銭に関する感覚、計算能力、過去にあった金銭面の課題など。逆に食生活や衛生面の情報は最小限にします。後見人の関心は財産管理と身上保護にあるからです。
相談支援専門員に渡す場合
サービス利用情報と生活全般をバランスよく書きます。サービス等利用計画の作成・見直しに直結するため、日中活動の様子、本人の希望、支援上の課題を厚めにします。
医療機関に渡す場合
障害・医療情報を厚くします。診断名、服薬状況、通院歴に加えて、受診時のコミュニケーションの特徴(診察室で緊張して話せなくなる、痛みをうまく伝えられない等)を書いておくと、診察がスムーズになります。
ベースとなるフェイスシートを一つ作っておき、渡す相手に合わせて項目の厚みを調整する。この一手間で、「とりあえず全部書いた書類」から「相手が読んで動ける書類」に変わります。
なお、いろんな書き方の例を読み比べてみたい方向けに、条件を選ぶとフェイスシートの記載例が何パターンも出てくる無料ツールを作りました
フェイスシートのテンプレートの選び方
フェイスシートは、自治体がテンプレートを用意している場合もあります。
私は、たまたま最初に見つけた桜井市のテンプレートをベースに、必要だと感じた項目を追加して使用しています。
有料のテンプレートも見かけますが、無料のもので問題ありません。
むしろ、自分の自治体が出している様式があるなら、行政側も見慣れているため、そちらを使う方がスムーズだと思います。
探す場合は、「共同生活援助 フェイスシート テンプレート 無料」などで見つかります。
まとめ
- フェイスシートは、利用者さんの全体像を短時間で共有するための書類
- 共同生活援助では、外部の関係者に利用者像を伝える場面で特に役立つ
- 必須書類ではないが、実務では「これがないと話が始まらない」ことが多い
- 生活の様子や支援のポイントが整理されていると、連携がスムーズになる
- 渡す相手によって項目の厚みを変えると、フェイスシートは何倍も実用的になる
フェイスシートは、相手をよく見て、一枚に整理されていると、支援や情報共有の“入口”として大きな役割を果たします。手間はかかりますが、その分、後の支援がぐっとスムーズになるのです。


コメント