結論から書きます。私のホームでは、利用者の自己負担金(定率負担分)を、報酬請求をした月の翌月に徴収する取り決めにしました。サービス提供月から数えると翌々月です。理由は、返戻による金額変更のリスクが消えてから徴収できることと、国保連からの入金と同じ月に揃うため経理上わかりやすいことの2点です。
この記事でいう自己負担金とは、障害福祉サービスの利用料のうち利用者本人が負担する1割部分(定率負担・利用者負担額)のことです。報酬の9割は公費から支払われ、残りの1割を利用者が負担する仕組みで、世帯収入に応じた負担上限月額があります。市町村民税非課税世帯の利用者は0円になるため、実際に発生するのは収入のある利用者に限られます。家賃・食費・光熱水費などの実費とは別のお金です。
利用者ごとの負担上限月額は、サービス受給者証に記載されています。どの欄に書かれているかは、受給者証の見方の記事で解説しています。
今回の記事は、すでにグループホーム(共同生活援助)を運営している管理者・運営者向けの内容です。
自己負担金の徴収タイミングを決めることになったきっかけ
私のホームでは最近まで、利用者から徴収するお金は家賃・食費・光熱水費などの実費だけでした。入居者全員が市町村民税非課税世帯で、定率負担(利用者負担額)が0円だったからです。実費は毎月ほぼ固定額なので、徴収のタイミングで悩む場面はありませんでした。
状況が変わったのは、収入があり定率負担が発生する利用者が入居してからです。定率負担は報酬額の1割で、利用実績に連動して金額が決まります。つまり、報酬請求の内容と直接つながったお金です。
実費だけの徴収とは性質が違うため、いつ・どうやって徴収するかを改めて取り決めることにしました。
報酬請求が通る前に自己負担金を徴収していいのか
最初に引っかかったのは、国民健康保険団体連合会(国保連)への報酬請求が審査を通る前に、利用者から定率負担を徴収していいのか、という点でした。
調べた結論としては、審査を通る前でも徴収して問題ありません。利用者負担の根拠は利用契約とサービス提供の実績であり、国保連の審査結果ではないからです。運営基準にも、サービスを提供した際に利用者負担額の支払いを受ける、と定められています。請求が通った際、とは書かれていません。
国保連の審査は事業所と公費の間の話で、事業所と利用者の間の支払い義務は、サービスを提供した時点で発生しています。多くの事業所が審査結果を待たずにサービス提供月の翌月に徴収しているのは、そういう建て付けだからです。
なお、徴収のタイミングそのものを定めたルールは見当たりませんでした。制度が求めているのはタイミングではなく、徴収の根拠と手続きです。厚生労働省が令和8年2月に公表した共同生活援助のガイドラインでも、利用者負担額については金額・使途・支払いを求める理由を記載した書面を交付し、説明のうえ同意を得ることが求められています。タイミングは事業所の設計に委ねられている、というのが調べた実感です。
それでも翌月徴収にしなかった理由は返戻のリスク
法的に徴収できることと、事故なく徴収できることは別の問題でした。
定率負担は報酬額の1割なので、報酬請求の内容に誤りがあって返戻になると、自己負担額も連動して変わる可能性があります。
返戻は珍しいことではありません。私のホームでも実際に発生しています。
サービス提供月の翌月に徴収する運用だと、金額が確定する前のお金を受け取ることになります。
さらに怖いのは二重徴収です。返戻が確定して翌月に請求を出し直すと、請求ソフトからは再請求に合わせて法定代理受領の通知と自己負担金の請求書がもう一度発行されます。前月に徴収済みであることを担当者が覚えていれば止められますが、逆に言えば、覚えていなければ止まりません。同じ月の自己負担金を二回受け取ってしまう可能性があります。
二重に徴収すれば返金の作業が発生します。お金の流れに逆方向の動きが残ると、帳簿も記録も複雑になり、実地指導での説明も難しくなります。人の記憶に頼った運用は、いつか破れると考えました。
報酬請求の翌月徴収なら金額確定後に受け取れる
私のホームで決めたのは、報酬請求をした月の翌月に徴収するスケジュールです。サービス提供月をもとに時系列を並べると、次のようになります。
サービス提供月に実績が発生する。翌月10日までに国保連へ報酬請求をする。翌月下旬に審査結果と返戻の有無が確定する。翌々月に国保連から報酬が入金され、同じ月に利用者から自己負担金を徴収する。
報酬請求から入金までの流れは、こちらの記事で詳しく書いています。
このスケジュールには利点が2つあります。
1つ目は、金額が確定してから徴収できることです。返戻の有無は徴収の前に判明しているので、金額が変わるかもしれない状態で受け取る場面がなくなります。二重徴収の発生源そのものが消えます。
2つ目は、経理がわかりやすくなることです。国保連からの入金(報酬の9割)と利用者からの自己負担金(1割)が同じ月に入るため、帳簿の上で同じ提供月の収入としてひとまとまりになります。あとから月ごとの収支を確認するときに、突き合わせが楽になります。
自己負担金の受け取りが1か月遅くなる分、資金繰りへの影響はありますが、金額の規模を考えると事故防止の利点のほうが大きいと判断しました。
徴収タイミングとあわせて決めておくこと
徴収のスケジュールを決めるとき、あわせて整えておいたほうがよいことがあります。実地指導で確認されるのは徴収のタイミングではなく、徴収の根拠が書面で残っているか、記録が追えるかという点だからです。
- 徴収する費目・金額・理由を記載した書面を交付し、利用者(署名が難しい場合は家族や成年後見人)の同意を得る
- 重要事項説明書・契約書に、利用料はサービス提供月の翌々月に請求する旨と、支払方法を明記する
- 請求書は費目ごとの内訳(定率負担・家賃・食費・光熱水費など)がわかる形にする。合算した金額だけの請求は曖昧な名目の徴収として指摘の対象になる
- 退居時は未徴収が2か月分残るため、最終月とその前月分の精算方法を契約書に定めておく
- 万一、徴収後に金額の訂正が生じた場合は翌月の請求で差額調整する旨を書面に入れておく
- 領収証の扱いを決めておく。口座振替の場合は、通帳への記載をもって領収証に代え、求めがあれば発行する旨を契約書類に定める運用が一般的
- 徴収の記録を保存する。請求書の控えと入金の記録が突き合わせできる状態にしておく
とくに退居時の精算は、決めないまま運用を始めると後から揉めやすい部分です。徴収を遅らせる設計と退居精算の定めは、必ずセットで整えることをおすすめします。
まとめ 徴収タイミングは報酬請求のスケジュールから逆算する
自己負担金の徴収タイミングに、唯一の正解はありません。サービス提供月の翌月に徴収して返戻時は差額調整で対応する運用も成立します。資金化が早い代わりに、調整の仕組みと記録の運用が必要になります。
大事なのは、返戻が起きたら何が起こるかを想定した上で、自分のホームに合うタイミングを選ぶことです。何も決めずに徴収を始めると、事故が起きたときに人の記憶と手作業で対応することになります。
定率負担のある利用者が入居したタイミングは、徴収の取り決めを整える良い機会です。報酬請求のスケジュールを紙に書き出して、どの時点なら金額が確定しているかを確認するところから始めてみてください。


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