この記事は、グループホーム(共同生活援助)をすでに運営している管理者・サービス管理責任者の方に向けて書いています。これから立ち上げを考えている方にも、「入居者のお金の管理をどう説明するか」という場面のイメージづくりとして読んでいただけると思います。
先にお断りしておくと、この記事に書くのは「うちのホームはこういう形に落ち着きました」という一つの事例です。金銭管理のやり方や説明の仕方に、こうしなければいけないという決まりがあるわけではありません。事業所ごとに規程も体制も違うので、参考になりそうなところだけ持ち帰ってください。
金銭管理の説明は、口頭だと必ずズレる
入居前の面談で、ご家族から必ず聞かれる質問があります。「お金の管理はどうなるんですか」です。
私はこれまで、この質問に口頭で答えてきました。ご本人が管理する場合もあります、ホームでお預かりする場合もあります、通帳ごとお預かりすることもできます、と。間違ったことは言っていないのですが、口頭の説明には弱点があります。聞いたご家族ごとに、理解がバラバラになるのです。
「全部ホームがやってくれると思っていた」「通帳まで預けたつもりはなかった」。こうした認識のズレは、入居後しばらくしてから表面化します。そしてお金に関するズレは、他のどんなズレよりもこじれやすい。
そこで私は、金銭管理の方式を紙に落とすことにしました。
うちでは「4つの方式」に整理しています

パンフレットでは、金銭管理を次の4つに分けて説明しています。
方式1:自己管理
ご本人がお財布や通帳を保管し、お買い物やお金の使い方をご本人が決める方式です。職員は必要に応じて相談や助言を行います。自分でお金を管理できる方、お買い物や支払いを自分で行いたい方に向いています。
方式2:預り金管理
ホームで現金をお預かりする方式です。日用品やおやつ、飲み物などの購入を、職員がお手伝いしながら管理します。お財布をなくしてしまう心配がある方、お金の使いすぎが心配な方に向いています。
方式3:通帳・預り金管理
通帳と現金の両方をホームでお預かりする方式です。家賃等の支払い管理、生活に必要な支出の管理、一定額の現金管理までホームが担います。金銭管理に継続的な支援が必要な方、収入や支出の管理が難しい方に向いています。
方式4:成年後見制度の活用
成年後見人等が預貯金の管理、各種支払い、契約手続き、財産管理を行う方式です。ホームは後見人等と連携しながら支援します。専門的な支援が必要な方、財産管理や契約に支援が必要な方に向いています。
ポイント:方式に「番号」を振ると、面談の会話が速くなります。「お母様のご希望だと2番か3番ですね」という会話ができるようになり、認識のズレが起きにくくなります。
なお、成年後見制度についてはホームから「勧める」形にはしないよう気をつけています。ご本人の権利に関わる制度なので、あくまで制度の紹介にとどめ、利用するかどうかの判断はご本人とご家族にお任せしています。
パンフレットは「本人用」と「家族用」の2枚に分けました
私は同じ4方式を、あえて2枚のパンフレットに分けて作りました。

1枚目は、ご本人とご家族に方式を選んでもらうためのパンフレットです。各方式に「こんな方におすすめ」というチェック項目を付けて、ご本人に合った方法を一緒に選びましょう、という建て付けにしています。
2枚目は、ご家族との連携に特化したパンフレットです。同じ4方式について、今度は「ご家族にお願いしたいこと」を方式ごとに書いています。たとえばこんな内容です。
- 自己管理の場合:使いすぎや不足が見られる場合は、ホームと情報共有をお願いします
- 預り金管理の場合:預り金が少なくなった際はホームからご連絡しますので、ご入金のご協力をお願いします
- 通帳・預り金管理の場合:通帳と印鑑をお預かりします。必要に応じて口座へのご入金をお願いします
- 成年後見制度の場合:申立てから開始まで時間がかかるため、将来の金銭管理について早めのご検討をおすすめします
なぜ2枚に分けたか
正直に言うと、最初から設計してこうなったわけではありません。
きっかけは、ご家族への連絡が「お金の話ばかり」になっていくことへの引っかかりでした。預り金が少なくなればご連絡する、残高が減ればご入金をお願いする。必要な連絡なのですが、ご家族からすれば、ホームからの電話イコールお金の催促、になってしまいます。それは嫌ですよね。私だって嫌です。
もうひとつ、面談で「お金の管理はどうしますか」と聞くと、ご家族が正解を探すような顔をされることがありました。でも私は、この質問に正解はないと思っています。この質問は本当は、金銭管理の方法を聞いているようでいて、「ご家族として、これからどう関わっていきたいですか」を聞いているのだと思うのです。
関わりを最小限にして、ご自分の生活を大事にしたいご家族もいます。しっかり関わって、できることは自分たちで協力したいというご家族もいます。身寄りのない方もいますし、ご家族との温度感が薄い方も、熱心に関わってくださるご家族もいます。私は、そのどれもが正解で、それぞれが生きやすい形であればいいと思っています。
ただ、それを口頭で「どこまで関わりたいですか」と聞くのは、あまりに答えにくい。だから選択肢を紙にしました。方式ごとに「ご家族にお願いしたいこと」と「ホームがどう動くか」が書いてあれば、ご家族は自分たちの距離感に合うものを、自分で選べます。ホームから頼み込むのでも、察してもらうのでもなく、ご家族に自分で決めてもらう。うちが2枚構成に落ち着いた理由は、突き詰めるとこれです。
金銭管理は、そのための入り口にすぎないのかもしれません。
定期報告の仕組みまでパンフレットに書いておく
もうひとつ意識したのは、報告の頻度と中身を先に約束してしまうことです。
- 預り金管理の場合:預り金管理表を定期的にお渡しします
- 通帳・預り金管理の場合:毎月、預り金明細と通帳残高のコピーをお送りします
これを契約前の段階で紙に書いて渡しておくと、ご家族の安心感がまったく違います。逆に言えば、ここに書いた以上、運営側は毎月必ず実行しなければなりません。自分たちの事務を縛る約束でもあるので、続けられる頻度で書くことが大事です。
注意:通帳や印鑑をお預かりする場合は、預り金規程の整備、保管場所の施錠、出納記録と領収書の保管、複数職員での確認体制が前提です。パンフレットは「見せ方」の話であって、中身の管理体制が先です。
また、方式は一度選んだら固定というものではありません。預り金管理で始めた方が、状況の変化で通帳のお預かりまで必要になることもあります。方式を変えるときは、なし崩しに移行するのではなく、あらためてご本人・ご家族に説明して同意をいただく。ここを曖昧にすると、せっかく紙で合意した意味がなくなってしまいます。
このパンフレット、実は生成AIで作りました
デザインの得意な職員がいなくても、この程度のパンフレットは作れる時代になりました。私は生成AIに「グループホームの金銭管理を4方式で説明するパンフレット」という趣旨で指示を出し、出てきたものを叩き台にして文言を直しました。
外注すれば数万円かかるものが、文言の検討込みで半日です。印刷して面談用のファイルに入れておくだけで、説明の質が職員間で揃うという副次効果もありました。誰が面談を担当しても、同じ4方式・同じ順番で説明できるからです。
まとめ:金銭管理の説明は「選べる形」にして渡す
最後に、これから同じものを作る方のために、うちのパンフレットの構成の要点を置いておきます。上に載せた実物の画像とあわせて、作るときの参考にしてください。
1枚目(ご本人・ご家族向け)
- タイトル:お金の管理について〜ご本人に合った方法を一緒に選びましょう〜
- 4方式それぞれに:方式名/誰が管理するか/具体的にやること/ご家族への報告方法/こんな方におすすめ
- 締め:ご相談ください(相談しながら決める姿勢を明示)
2枚目(ご家族向け)
- タイトル:ご家族との連携について〜安心して生活していただくために〜
- 4方式それぞれに:方式名/ご家族にお願いしたいこと/報告の頻度と中身
- 締め:ホームとご家族で協力して支援します
繰り返しになりますが、これはあくまでうちのホームのやり方です。4方式という分け方も、2枚構成も、正解というより「うちはこれで説明のズレが減った」という結果論に近いです。ただ、口頭だけの説明は認識のズレを生みやすく、そして「お金の管理はどうしますか」という質問の奥には、ご家族の関わり方の希望が隠れている。これはどこのホームでも同じだと思います。
紙にするかどうか、どこまで書くかは、それぞれのホームの体制に合わせて考えてみてください。まずは4方式の一覧表1枚からでも、面談の空気は変わると思います。


コメント