この記事は、グループホーム(共同生活援助)をすでに運営している管理者の方と、これから開設を考えている方の両方に向けて書いています。
テーマは夜間支援等体制加算です。夜勤や宿直を置けばもらえる加算、くらいの理解で運営していると、開設初期に想定外の赤字を抱えたり、逆にもらえるはずの報酬を取り損ねたりします。私自身、2棟目の体制届を出し直すときにかなり迷ったので、その体験も含めて整理します。
なお、この記事の単位数は令和6年度報酬改定にもとづく国報酬のものです。
まず自分の事業所の数字で試したい方は、こちらのシミュレータをどうぞ。なぜこの計算になるのかは、このあと本文で解説します。
夜間支援等体制加算 月額シミュレータ
対象利用者数(届出)と入居者の区分構成から、1ヶ月の加算額を試算します
加算の種類と対象利用者数
1〜30の範囲で入力してください
現在の入居者の内訳と条件
入居者を1人以上入力してください
夜間支援対象利用者数(届出)
–
1日あたりの合計
–
月額の見込み
–
対象利用者数が1人ずれると(同じ区分構成の場合の月額)
※単位数は令和6年度報酬改定にもとづく国報酬(夜間支援等体制加算)です。試算は全員が入力した日数分在籍した場合の概算であり、実際の請求は利用者ごとの在籍日数で算定されます。端数処理や届出の運用は指定権者により解釈が異なる場合があるため、体制届の提出前に必ず都道府県または市町村の担当課にご確認ください。
夜間支援等体制加算の単価はどう決まるのか
夜間支援等体制加算(Ⅰ)は、夜勤を行う夜間支援従事者を配置した場合に算定できる加算です。単価は2つの要素で決まります。
- 1人の夜間支援従事者が支援する夜間支援対象利用者数
- 利用者ごとの障害支援区分
たとえば区分4以上の利用者の場合、対象利用者数が2人以下なら1日672単位、4人なら336単位、5人なら269単位です。
対象人数が増えるほど1人あたりの単価は下がりますが、算定できる人数は増えるので、夜勤者1人あたりの総額はほぼ一定になるように設計されています。ここは後で効いてくるので覚えておいてください。
最大の落とし穴は「実人数で計算しない」こと
この加算の最大の落とし穴は、夜間支援対象利用者数が「いま実際に入居している人数」ではないことです。
- 原則は前年度の平均利用者数(前年度の全利用者の延べ数を開所日数で割った数)で、端数は小数点第1位を四捨五入する
- 新規開設・ユニット増・定員増のときは、増えた定員数に90パーセントを掛けた数を対象利用者数として使う
つまり体制届に書く人数は、自分で選べる数字ではなく、計算方法が決まっている数字です。ここを「いま何人いるか」で書いてしまうと、届出の段階から間違えることになります。
新規開設は赤字前提で組む
定員4人のユニットを新規開設した場合、対象利用者数は4×0.9=3.6、四捨五入で4人です。実際の入居がまだ1人でも、届出上は「対象4人」の単価が適用されます。
区分4以上の方が1人だけ入居している状態だと、算定できるのは336単位×1人。単価10円、30日で月およそ10万円です。夜勤者の人件費が月20万円前後かかるとすれば、この時期の夜間支援等体制加算は構造的に赤字です。避ける方法はありません。制度がそういう設計だからです。
【開設初期の夜勤は赤字前提。資金計画には、入居が揃うまでの数ヶ月分の夜勤人件費の持ち出しを最初から織り込んでおくこと】
対象利用者数は毎年4月1日に見直しがあります。
- 開設または定員増から1年以上 → 前年度の平均利用者数
- 6ヶ月以上1年未満 → 直近6ヶ月の平均利用者数
- 6ヶ月未満 → 定員×90パーセントのまま
実態に追いつくのは年度や見直しの切り替わりであって、月単位では追いつきません。
逆に、入居が一気に進むと取り戻せる期間が来る
この時差構造は、逆方向にも働きます。
前年度の平均利用者数が1人だった事業所に、今年度4人入居したとします。年度途中の届出変更が必要になるのはユニット増・定員増・定員減があったときだけなので、既存の定員内で入居が増えただけなら、対象利用者数は次の見直しまで1人のままです。
すると4人全員に「2人以下」の単価、区分4以上なら672単位が適用されます。672単位×4人×30日×10円で月およそ80万円。夜勤者は1人です。
開設初期に持ち出した分を、ここで取り戻す。時差構造を知らないと、開設初期の赤字だけ食らって、回収期間の存在に気づかないまま終わります。
ユニットを増やしたとき、夜勤体制は3通りある
私が2棟目の体制届を出し直すときに直面したのがこれです。開設から6ヶ月が経ち、見直しのタイミングが来ました。当時、1棟目は平均4人、2棟目はまだ1人。夜勤体制の選択肢は3つありました。
- 1棟目だけに夜勤を置き、2棟目は加算(Ⅲ)の連絡体制(1日10単位)にする
- 夜勤者1人が1棟目に常駐しつつ2棟目を巡回し、対象人数を合算する
- 両棟に夜勤者を1人ずつ置く
3つ目は、利用者1人のために夜勤者を1人張り付ける形になるので、報酬の増分がほぼ人件費で消えます。2棟目の方に毎晩の介護等の支援がどうしても必要という支援上の理由がない限り、選択肢から外れます。
合算しても総額はほぼ変わらない。ただし例外がある
残る2案を比較して意外だったのは、合算しても事業所全体の加算総額はほとんど変わらないことでした。先ほど書いたとおり、単価表は夜勤者1人あたりの総額がほぼ一定になる設計だからです。
- 1棟目単独(対象4人):336単位×4人=1,344単位
- 合算(対象5人):269単位×5人=1,345単位
ほぼ同じです。では何で決めるか。決め手は次の入居です。
合算しておけば、2棟目に次の入居者が入った瞬間から、その方も269単位で算定できます。単独のままだと、2棟目の新しい入居者は10単位のみ。月にすると約8万円と約3千円の差です。2棟目を埋めていく計画なら合算が明確に有利、入居が当面動かないなら単独でシンプルに、という判断になります。
なお、合算で損をするケースがひとつだけあります。新棟の開設直後、0.9掛けで水増しされた人数のまま合算すると、単価だけ下がって算定人数が実態どおりにしか増えないので、総額が減ります。合算に切り替えるのは、見直しで新棟の対象人数が実態に戻ってからです。
【巡回で合算する場合は、住居間がおおむね10分以内の距離にあることと、一晩1回以上の巡回が要件。夜勤者の負担が増えるので手当の設計もセットで考えること】
体制届の出し直しは「テクニック」ではなく義務
ここまで読むと、体制届の出し直しが得をするための工夫に見えるかもしれませんが、これは義務です。そして放置のリスクは両方向にあります。
- 平均利用者数が減っていたのに出し直さない → 本来より低い単価で請求し続けて損をする
- 平均利用者数が増えていたのに出し直さない → 本来より高い単価での過大請求になり、実地指導で発覚すれば過誤調整や返還の対象になる
毎年4月1日時点で、開設または定員増から1年以上か、6ヶ月以上1年未満か、6ヶ月未満かを確認し、該当する計算方法で対象利用者数を出し直す。変更が生じるなら体制届を提出する。これを年度当初のルーティンに組み込んでおくのが確実です。
シミュレータで自分の数字を確認する
ここまでの話は、正直、言葉だけでは腹落ちしにくいと思います。対象人数が1人ずれると月額がいくら変わるのか、合算と単独でどちらが残るのか。自分の事業所の定員、平均利用者数、区分構成、夜勤人件費を入れて動かしてみるのが一番早いです。
この記事に載せているシミュレータに数字を入れて、まず対象利用者数が1人ずれたときの月額差を見てください。次に2棟運営の方は、単独・合算・両棟配置の3案を、加算収入から夜勤人件費を引いた差引で比べてみてください。加算収入だけを見ると両棟配置が大きく見えますが、差引では逆転するはずです。
■2棟運営の方へ:3案を自分の数字で比べる
ここまで読んだ2棟運営の方は、単独・合算・両棟配置の3案を実際の数字で比べてみてください。夜勤者の人件費まで含めた差引で見ると、加算収入の大きさと残る金額が別物だと分かるはずです。
2棟運営の夜間支援体制 3案比較シミュレータ
単独夜勤・合算巡回・両棟夜勤を、加算収入から夜勤人件費を引いた差引で比べます
A棟
B棟
※単位数は令和6年度報酬改定にもとづく国報酬(夜間支援等体制加算)です。試算は全員が入力した日数分在籍した場合の概算であり、実際の請求は利用者ごとの在籍日数で算定されます。端数処理や届出の運用は指定権者により解釈が異なる場合があるため、体制届の提出前に必ず都道府県または市町村の担当課にご確認ください。
まとめ
夜間支援等体制加算で押さえるポイントは4つです。
- 対象利用者数は実人数ではなく、前年度平均または定員×0.9で機械的に決まる
- 開設初期は赤字前提で資金計画を組む
- 入居が進めば時差構造が逆に働き、回収できる期間が来る
- 体制届の出し直しは毎年4月の義務。忘れると損と返還の両方のリスクがある
最後にひとつ。端数の扱い(平均が1人未満になる場合など)や、住居ごとの体制の組み方、切り替え時の届出タイミングは、指定権者によって運用の解釈が入る余地があります。体制届を出す前に、必ず都道府県または市町村の担当課に確認してください。制度の構造を理解したうえで確認の電話をかけると話が早いですし、担当者の説明も正確に受け取れます。


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