薬の管理は、グループホーム(共同生活援助)を運営していると必ず向き合う仕事です。この記事では、私のホームで実際に行っている服薬管理の方法を、一つの事例としてまとめます。現在グループホームを運営している管理者・運営者の方に向けた内容です。
先に結論を書きます。私のホームでは、入居者全員の薬をホーム管理にはしていません。服薬管理が必要な人だけを対象にし、お薬カレンダーへのセットと残数の管理、トラブル時の判断は私が一人で担っています。世話人には「確認と記録」と「発覚したら即報告」に徹してもらう形です。
グループホームで服薬管理が必要な入居者は全員ではない
私のホームでは、入居者のうち4名ほどが、職員が関わる形での服薬管理が必要な方です。
グループホームに入ったからといって、全員の薬をホームで預かる必要はないと私は考えています。自分で管理できる人は自分で管理してもらう方が、その人の生活の力を保つことにつながると思っているからです。ここは運営者によって考え方が分かれるところなので、あくまで私のホームの一例として読んでください。
一方で、知的障害のある方の場合、「いつ、どの薬を、どのタイミングで飲むか」を自分で組み立てることが難しくなりがちです。薬の内容が変わったときの対応も含めると、本人だけで回すのは相当な負担になります。
私のホームでは、将来的に一人暮らしなどを目指している方を除いて、「確実に、安全に飲める」ことを優先しています。今のところ、ホーム管理から自己管理へ段階的に移していく取り組みは組んでいません。必要だと思ったときには、自分で薬の管理ができる方法を障害に合わせて、模索していくことになると思います。
服薬管理の日常の仕組み(お薬カレンダーと確認記録)
ホームが管理する薬について、日常の管理の流れはシンプルです。
- 薬は壁掛け式のお薬カレンダーにセットしておく
- 入居者本人がカレンダーから自分で薬を取って飲む
- 世話人が、決められた時間帯にきちんと飲めているかを確認する
- 支援記録に「内服確認済み」のチェックをつける
お薬カレンダーは、セリアで購入したポケットウォール(壁掛けの小物入れ)を使っています。専用品でなくても、朝・昼・夕などのポケットに分けられれば十分に機能します。
本人がカレンダーから薬を取れない、手渡しが必要なレベルの方が入居された場合は、職員が渡す形に切り替える必要があると考えています。現時点ではその段階の方はいないため、「自分で取る、職員が確認する」という運用にしています。
補足として、薬の種類が多い方の場合は、一回分の薬をまとめて一つの袋に入れてもらう「一包化(いっぽうか)」を主治医や薬局に相談する方法もあります。薬にあまり触れてこなかった運営者の方は、選択肢として覚えておくと管理がかなり楽になります。
管理者だけがやっている服薬管理の作業(カレンダーのセットと残数管理)
お薬カレンダーに薬をセットする作業は、私が一人で行っています。他の職員には任せていません。
理由は、責任の所在をはっきりさせるためです。セットの段階で間違えると、その後の確認がどれだけ丁寧でも防げません。誰がセットしたか分からない状態にはしたくないので、セットする人を一人に固定しています。
セットだけでなく、薬の残数の管理も私が行っています。私のホームでは今のところ紛失は起きていませんが、残数を追っていれば、つけ間違いにも早く気づけます。残数の管理には自作のアプリを使っています。
ただ、私一人でセットから残数管理まで行う運用は、今の入居者数だから成り立っています。服薬管理が必要な方が増えてきたら、やり方を考え直す必要があると思っています。
他の施設ではダブルチェックを取り入れているところも多いので、一人で管理していると聞くと不思議に感じる方もいるかもしれません。実は、ダブルチェックは二人で確認することだけを指すわけではなく、一人でも行える手法です。この記事では詳しく書きませんが、私は一人で行うダブルチェックを取り入れています。
服薬トラブルは発覚した時点で管理者に報告する
服薬管理で本当に緊張するのは、トラブルが起きたときです。
飲み飛ばした、飲みすぎた、他の人の薬を飲んでしまった。同じトラブルでも、すぐに分かったのか、数時間経ってから分かったのかで対応は変わります。そこに薬の効き方の知識が加わって、「これはまずい」「これはそこまで慌てなくてよい」という判断が出てきます。
私のホームで職員に絶対のルールとして課しているのは、一つだけです。薬に関するトラブルは、発覚した時点でいったん管理者に報告すること。判断は職員にさせず、行動を起こす前に必ず確認してもらっています。
一例を挙げます。以前、床に薬が落ちていたことがありました。ここで「落ちていたので飲ませました」という対応をしてしまうと、危険な場合があります。落ちていた薬は、いつ落ちたものか分かりません。今日の分だと思って飲ませたら、本人はすでに飲んでいて、結果的に二重に飲んでいた、ということが起こりえます。効きすぎてはいけないタイプの薬であれば、どんな影響が出るかわかりません。
落とした時間が分からないなら、その回は飛ばす(スキップする)という判断が必要な場面もあります。判断そのものを職員に求めず、報告してもらってから管理者が決める形にしているのは、こうした場面を想定しているからです。
職員に徹底している服薬トラブル時のルール
- 薬のトラブルは、大小にかかわらず発覚した時点で管理者に報告する
- 行動を起こす前に必ず確認する
- 自分で判断して対応しない
服薬の判断を支える看護師の配置
トラブル時の判断には、薬の知識が欠かせません。「この薬は一回飲み忘れても影響が小さい」「この薬は体調がこういうときには飲ませない」といった判断は、経験と知識の両方が必要で、ここが難しいところです。
私のホームでは看護職員配置加算を取得しており、看護師に逐一確認できる体制にしています。薬に関する判断を一人で抱え込まずに済むのは、私のホームの強みであり特性です。
看護師を配置していないホームでは、主治医や薬局の薬剤師に事前に確認し、「飲み忘れたときはどうするか」「体調変化のときはどうするか」を書面で残しておくことが現実的な対策になります。判断を職員の勘に委ねない仕組みを作っておくことが大切です。
グループホームの服薬管理は今後も課題が残る
私のホームの服薬管理は、まだ改善の余地があると感じています。手渡しが必要な方が入居されたときの切り替え、薬の変更があったときの情報共有の流れ、入居者が増えたときの管理体制など、課題は残っています。
正直なところ、服薬管理はかなり難しい仕事だと思っています。トラブルが起きたときの対応にも気を使いますが、トラブルが起きないようにする仕組みを作ることの方が、はるかに難しい。私は病院で働いていた時期に薬の事故をたくさん見てきました。人が関わる以上、事故をゼロにする仕組みは簡単には作れません。
だからこそ、「この薬はこういう薬だから、こう運用していく」と、一つひとつの薬について考え続けるしかないと思っています。型を決めて終わりにするのではなく、入居者の状態や薬の内容が変わるたびに向き合い直す。私のホームで行っているのは、その積み重ねです。
読者の方には、この記事を「正解」としてではなく、一つの事例として持ち帰ってもらえればと思います。ご自身のホームの入居者数、職員体制、看護師や主治医との距離感に合わせて、どこまでを誰が担うのかを考える材料になればうれしいです。
まとめ:服薬管理は必要な人を見極めて仕組み化する
- 服薬管理は全員一律ではなく、必要な人を見極めて対象にする(私のホームの場合)
- カレンダーのセットと残数管理について、管理者として責任の所在を明確にしている
- 職員に課している絶対のルールは「発覚したら管理者に報告」の一つだけ
- トラブルを防ぐ仕組み作りに完成はなく、向き合い続けている


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