緊急時、職員が最初に連絡すべき相手は誰か——ある朝の送迎トラブルから考えたこと

グループホーム運営

この記事は、すでにグループホーム(共同生活援助)を運営している管理者・サービス管理責任者の方、そして現場を回す立場にある方に向けて書いています。

少し愚痴も混じりますが、最後はちゃんと「次にどう備えるか」に着地させるので、お付き合いください。

今朝は、送迎のトラブルで一日が始まりました。

結論から言うと、なんとか巻き直しました。

ただ、その過程で「ああ、これは仕組みの問題だな」と痛感したので、忘れないうちに書いておきます。

ある朝、送迎の車が来なかった

まず起きたこと。

作業所への通所の送迎を担当する職員が、時間になっても現れませんでした。

私のほうにパートさんから、迎えの車が来ないのですがどうしましょう、と連絡がありました。

パートの世話人さんが一人。

本来そこにいるはずの指示役がいない。

連絡もない……。

連絡ありがとうございます、と伝え、私は子どもを連れて現場へ駆けつけました。

まずお礼を言ったうえでパートさんを帰す。

これは私の信条でもあるのですが、就業終了時刻を過ぎた人に、現場の責任を押し付けてはいけない。

時間を過ぎているなら、その人に対応をさせるべきではないと思っています。

特にパートさんという立場の方には。

それから、本来送迎に出てくるはずの職員へ連絡。

寝坊したとのこと……。

送迎依頼をほかに飛ばしつつ、利用者さんに事情を説明し、その日のその後の予定に影響が出ないかを調べる。

送迎のあとに入っていた別の予定の段取りも確認し、職員の状況とあわせ自分が動ける可能性を計算しながら、利用者さんを送り届けたあとは車で走り回る、というかなり無茶な巻き直しをしました。

かなりギリギリでした。

ふだんから、車のガソリンを早めに入れておく癖があるのですが、これは、いざ「給油している時間はない、でも今すぐ動かなければ」という場面が時折出てくるからです。

こういう地味な習慣が、こういう時に役立つんですよね。

今日のはガソリンなかったら詰んでた。

問題は「遅刻」ではなく「行動の順番」だった

さて、ここからが本題です。

今回、私が一番引っかかったのは「遅刻した」という事実そのものではありません。

遅刻したあと、その職員が取った行動の順番でした。

その職員は、それなりに動ける人です。

だからこそ、本来ならもっと早くできることがたくさんあった。

その職員は遅刻をしたと確信した後、最初にホームへ連絡を入れたものの、つながらなかった。

(おそらくその時、ホームと私のほうで電話をしていた。)

次にその職員が取るべき行動は、私に連絡を入れることでした。

ところが実際には、自分が送迎に間に合わないからと、他の職員へ送迎を回す指示を出すことを優先したのです。

その電話が終わった直後に、たまたま私から連絡をし、そこで初めて状況が共有されました。

考えてほしいのです。

迎えに行けない。

現場のパートさんは就業終了時刻を過ぎている。

ホームに電話してもつながらない。

この状況で最優先すべきだったのは、「現場を見てもらうために、まず管理者である私へ連絡する」ことでした。

送迎の段取りをどうこうしている場合ではないのです。

なぜか。

それは、その時点で何のトラブルが起きているのか、誰にも分からないからです。

送迎が遅れているだけなのか、もっと深刻な何かなのか。

現場にいるパートさんは就業時刻を過ぎていて、職員の性格によっては「もう時間だから」と帰ってしまう人だっています。

(よくないですが、いろんな人がいます。)

誰が状況を把握し、誰が判断するのか。

それが宙に浮いた瞬間が、一番危ないんです。

🟥 緊急時に職員が最初に連絡すべき相手は、送迎の代役でも、利用者さんでもなく、現場全体を見て判断できる管理者です。

順番を間違えると、巻き直しは一気に重くなります。

今回まさにそれでした。

「やります」と言ってできなかった分は、誰かが埋めている

正直に言えば、私はその職員に対して、それなりに小言を言いました。

ただ、ここが大事なところで——本来、今までの飲み会での自分の行動を振り返れば、翌日に現場を回すために打てる手はあったのです。

最初から送迎の代役を頼んでおけばよかった。

別の予定だって、先に誰かに振っておけばよかった。

それをしなかった。

私は別に「私生活を慎め」と言いたいのではありません。

プライベートはあっていい。

でも、何があっても現場が回るように設計しておくべきなのです。

そして、もうひとつ忘れてはいけないこと。

「やります」と言ってできなかったことは、必ず誰かが代わりにやっている、ということです。

今回も、その職員ができなかった分を、私が子どもを連れて走り回って埋めました。

やると言って果たせなかった穴は、消えてなくなるわけではない。

必ず別の誰かの時間と労力で穴埋めされているのです。

極端なことを言えば、タクシーに2万円かけてでも帰ってこい、という場面だったのですが……。

2万円で済むなら安いものです。

他人の信用を削るほうが、よほど高くつくのですから。

平時に「型」を作っておく

では、この一件を「グチ」で終わらせず、次に同じことが起きても回る形に落とし込んでおきます。

私が大事にしているのは、有事になってから考えるのではなく、平時のうちに「こういうときはこう動く」という型を作っておく、という考え方です。

型さえあれば、いざ何かが起きたとき、いちいち頭で組み立て直さなくても身体が動く。

逆に型がないと、今回のように、動ける人ですら連絡の順番を間違える。

判断の速さや正確さは、その場の能力よりも、平時に型を用意していたかどうかで決まると思っています。

今回の一件を、その「型づくり」の材料として見直すと、打てる手はこのあたりです。

🟨 緊急時に最初に連絡する相手を「管理者」と決めて、全員で共有しておく。

トラブルが起きたら、送迎の代役でも利用者さんでもなく、まず現場全体を見て判断できる管理者へ一報。

これを「考えなくても身体が動く」レベルにしておきます。

送迎の段取りは、その次です。

🟨 「何があっても回る」前提で、前日のうちに段取りを置いておく。

プライベートはあっていい。

その上で、翌日に予定がある職員は、前夜に代役や代替の段取りを用意しておく。

一人が欠けても回る形を、起きる前に作っておきます。

属人化させないことが、いざというときに一番効きます。

🟨 「早めに備えておく」習慣を、現場全体に広げる。

私のガソリンの話と同じで、ギリギリまで使わず早めに満たしておく。

連絡先の一覧も、代役の取り決めも、利用者さんの予定の把握も、全部「いざ動く時間がない」場面を想定して、平時のうちに整えておきます。

それは、生きたBCPを作る作業でもある

ここまで読んで、「それBCPの話では」と思った方もいるかもしれません。

そのとおりで、共同生活援助の事業所は、令和6年4月から業務継続計画(BCP)の作成が義務化されています。

自然災害と感染症に備えた計画を作り、職員に周知し、研修と訓練まで行うことが求められています。

ただ、私が現場で実感しているのは、BCPは作って棚に置いた瞬間に死ぬ、ということです。

本当に効くのは、立派な計画書そのものではなく、今日書いてきたような「緊急時はまず管理者へ連絡」「前日に段取りを置いておく」といった、平時に職員の身体へ染み込ませた型のほうなのです。

義務化が研修と訓練までをセットにしているのは、おそらくそこを分かっているからだと思います。

🟦 厚生労働省がBCPのガイドライン・ひな形・研修動画を無料で公開しているので、ゼロから書く必要はありません。

最後にひとつだけ。

今回遅刻したのが「それなりに動ける職員」だったことが、私にはむしろ困ったのです。

動ける人でも、連絡の順番ひとつで現場はここまで危うくなる。

だからこそ、能力に頼るのではなく、誰がやっても回る型を、平時のうちに作っておく。

これが、現場を預かる私たちにできる一番地味で、一番効く備えだと思っています。

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